こなかのほんだな

不良兼業主婦の読書日記的なもの。

銀杏堂

 

銀杏堂

銀杏堂

 

 

 美しい装丁、イラスト、プロローグに惹かれ、思わず購入してしまった児童書。


「ああ、これは小さなレディに、とんだ失礼をしてしまいました。ええ、ええ、あなたはここにあるものをこわしたりなんてしないでしょうね。どうぞ許してくださいまし」


レンちゃんの通学路にある【銀杏堂】はこまごまとしたものが並んでいる小さなお店。
お店にいる小さなおばあさん〈高田さん〉と友だちになったレンちゃん
高田さんが話してくれたのは骨董品ひとつひとつに秘められた数々の冒険物語。


レンちゃんをこども扱いしない高田さんが話してくれる冒険談は、そのどれもが凛として、高田さんが一人の人間として生きてきた事を教えてくれる。

 

その緑色の石はオーロラのようにつねに色をかえてゆらめいていた。

ふしぎな緑の世界に閉じこめられた、四つ葉のクローバー。

ユニコーンの胸につかえた苦しみや悲しみが吐き出されたあとに残った、美しい緑色の石。

まるで悲しみの結晶のような石だけど、クローバーというしあわせな希望が埋め込まれていた。

人は誰しも自分の中に石を持っている。石を抱えて生きている。

温かい手のひらで背中を擦って石を吐き出したい、という衝動を持って生きている。

けれど、悲しみの石が美しいものだとしたら、一生飲み込んだまま生きていくのもいいのかもしれない、と高田さんはレンちゃんに語るのだ。

 

この【四葉のクローバー入りエメラルド】というお話は、村上春樹の短編『タイランド』を思い出させる。

わたしの胸につかえている石は何色なのだろう。


いまを生きることも大切だけど、人間はそれだけじゃ生きられない。思い出をものにたくすと、そのものはかがやく。
誰かからみたらガラクタかもしれないけれど、ある人からみたら自分の生き様を物語ってくれるたからもの。
大人になった今だから、この物語が心に染み渡る。

高田さんのようなおばあさんに、わたしはなりたい。

 

神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)

神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)