こなかのほんだな

不良兼業主婦の読書日記的なもの。

トルストイ ショートセレクション 三びきのクマ

児童書版元の理論社から刊行された、ショートセレクションのシリーズより。

このシリーズの最大の特徴は、イラストがヨシタケシンスケさんであること。

版元営業の方からは

ヨシタケシンスケさんのイラストなので、女子大生にも好評だと思うんです」

「児童書だけでなく、ぜひ文芸書コーナーでも展開してください」

とオススメされましたが、イラストがかわいいという理由だけで女子大生が買うのかが全く不明だと感じたのはナイショ。

古典と言われそうな作品を、ヨシタケさんの絵で親しみやすくしていてハードルが下がるのは事実だと思う。

(女子大生は関係ないかと…

 

トルストイ

実はほぼ読んだことない。

高校生の頃にTVで放送されていたモノクロの映画『アンナ・カレリーナ』を見て手にとっては見たけれど、途中で断念…。

今回は、表紙の親しみやすさ←と、短編集という事でハードルが下がったので読み進めてみたのでした。

 

表題の『三びきのくま』を含め、全8話が収録されている短編集。

人間の理性、良心、賢さ、愚かさ、狡猾さ…がどの作品にも描かれていて、教訓めいているのだけれども、ストーリーがおもしろいのでスッと読むことができる。

 

短編の1つ『小悪魔がパンの恨みをパンではらす』というお話は、悪魔見習い?の小悪魔が貧しい爺さんの昼食のパンをかすめ取るところから始まる。

パンを取られた貧しい爺さんは悲しんだけれど「取るのには理由があったのだろう、恵んでやったと思っておくさ」と口にする。

罵声を期待していた小悪魔は悔しがり、大悪魔にパンの敵を取ってこい、と命じられる。

小悪魔はパンで恨みを晴らそうと、あの手この手を使い、貧乏な爺さんをお金持ちにし、爺さんが持っていたずるく暴力的な心を引き出してしまう。

小悪魔は言う。

「ケダモノの血はもともと人間の中にあるんです」

「豊作で麦が余ったら、爺さんは頭を使い始める。自分を幸福にできる方法はないかな、と」

 

貧しい時ほど良心や理性や本当の賢さを持ち、自身が恵まれるほど暴力的で愚かでケダモノになってしまう。

これが、人間というもの。

 

わたしの中のケダモノを手懐けるため、わたしは今日も本を読み賢くあろうと努力をしている。